今週のお題「納豆」
というわけで、何だかどうやら「味がどう」とか「レシピがどう」とか「混ぜるの何回」とかそういう「食」の観点からの内容をお求めのようだが、先に謝っておこう、ご期待に沿えず申し訳ない。私が納豆と聞いて思い出すのは「食」としての納豆ではなく「テスト」としての納豆なんである。
今から●年前、私は1年間だけ、農業や食品加工について教える実業系学校で一般科目を教える教員をしていたことがある。もちろん普通の学校と同じで学期ごとに考査があり、40点以下が赤点で、下手すると落第する。というシステム。
忘れもしない「食品加工Ⅱ」の最終テストだった。その時私は加工クラスの1つに試験監督として入っていた。
試験監督なので、もちろん試験中盤、机間巡視をする。
いや、なんかもう机間巡視する前から、ちょっとなんか、難しい気配がしてたんだ。クラスのほとんどが頭を抱えているしなんだか解答用紙が白い。だいじょぶか。
一体どんな難問が、と思っていたらその学期に実習で作ったヨーグルトとか納豆とかバターとかの問題だった。手順とかその作業の理由とかを問う内容。
と、とりあえず君たち何か書いて…!という私の無言の願いなどなすすべなくみんなうんうん言っている。おおうこれもうみんなダメなんじゃ…?
と思って一人重々しい空気の中たたずんでいたら、救世主がやってきた。テストの出題者である。先生は一瞥して一瞬でその重々しさを察知、速攻救いの呪文を唱えた。
「えー、もうダメだ、解けないという人は解答用紙の裏面の白紙の部分に作文を書いてください。お題は『納豆と青春』」
去っていく救世主、響く何十枚もの解答用紙を裏返す音。
やはり…やはりみんな書けてなかった…みんな作文やりはじめた。
ただ、救世主の放った一言で空恐ろしいほどの沈黙だったクラスにみんなのシャーペンの音がよみがえる。よかった…これで赤点は…
と、思ってふと横の机を見てみたら、その子、じっと私を見上げてきて
「せんせい(私だ)、なっとうって…漢字…どう書くんでしたっけ…」
半泣きだー!ちらっと見えた解答用紙(の裏面)、タイトルのところ「 と青春」って書いてあるーなっとう書けてないー!
「えっとえっと、いとへんにうち、って書いてまめ…(いいよねいいよね漢字くらいなら教えてもいいよね)」
「うん…うん…ありがと…」
よかった、か、書けたー!
いかん、思っていたのとは違うところで迷い子になっている子が!
だ、だいじょぶか!と思って机間巡視を続ける私。そして「なっとう」を漢字で書けていない子がいっぱいいて、途中で黒板に「納豆」って書いた私。
みんな納豆は漢字で書けた。よかった…みんな作文は順調に書けているわ…と思ってふとまた別の子の解答用紙(裏面)を見てしまった。
最初の一行が、
タイトル「 納豆の青春 」
ってなってた。
しかももうすごく文章が書けていた。
やはりワラの中、ゆっくりあったかい中で発酵してるときかな…納豆の青春…。
もういっぱい書いてたからあえて正さなかった。それはそれで、せんせいはいいと思うよ。
そんな思い出。みんな赤点じゃなかったぽいからそれもいいと思う。
テストはできなかったかもしれないけれど、みんないい子たちだったな。
そんな私の納豆話でした。ちなみに好きなので毎朝食べてるけど調子にのって1パック食べたりするとお腹こわす(笑)。ほどほどに。