私はお笑いコンビ「かが屋」を失礼ながら存じ上げない。
お笑いに「そこそこ詳しい(本人談)」後輩に聞くと「あ、結構おもしろいですよ」と言っていた。売れてないことはない、お笑い好きな人は知っているんじゃないですかね、ということだった。そうなのか。知らなくてなんかごめん。
で、知らないのに読んでみた。というか知らないからこそ、読んでみた。知っているとどうしても読んでいるときに著者のイメージがよぎってしまうので、又吉直樹さんの本や加藤シゲアキさんの本を基本読めていない(「オルタネート」は読んだけども)。
今年14作目。
おおあんごう 加賀翔 著
とんでもない父を持つ小学生の生活、の小説。
この、純粋で優しくて繊細なサバイバーをカエルのぬいぐるみごと抱きしめてやりたい。少年、君はよくやった。
その父は、善悪の判断はできるが、細やかなことは全く理解ができない、そういう人だ。そしてそれは多分、直らない。まず理解する、というところから困難だろうと思う。
お母さんの決断も、それから大人になってからの君の行動も、正しい。
この小説の内容にも、配慮とその優しさがうかがえる。君は、よくやった。
実は、この本を数ページ読んで、読むのをやめようかと思った。私自身はこのような現実を生きていないが、これに近い現実を今生きる人がいることはわかるし、実際に会ったこともあることから、あまりにもわかりすぎ、つらかったためだ。
最後まで読んでよかった。
この本を読んで一歩を踏み出せる人がきっといる。
この本を読んで、自分だけじゃなかった、と安心する人がきっといる。
この本には救いがある。
どの立場で物をいうかと思われそうだが、やっぱり言う。
この本を世に出したことも含めて、
少年、君は、よくやった。