私が住む町から車で2~3時間くらいのところに藤田真央さんがピアノを弾きにいらしたので行ってきた。大雨。
このご時世なので普段なら公共交通機関を利用するところを、頑張って車移動。心配事は駐車場、だったのだが杞憂だった、全然止められた、むしろまだまだ全然空いていた。ただ、会場内は空いていない。このご時世に8割方埋まっている。すごいな。
5分ちょっと遅れてスタート。黒(濃紺だったのかも。遠すぎてわからない)の上下。猫背気味に歩いてきて一礼してショパン。
そして音。
初手からとんでもなかった。「えっと、ちょっとなんだかよくわかりませんけども?」ってなるほどの音だった。
弱い音がいっぱいのちいさな丸い球体になって浮き上がってくる感じだった。好きだ。王冠を開けたばっかりのサイダーの泡みたいだった。なんであんなにまんまるの音になるんだろう。すごいな。ピアノを手懐けていらっしゃる。もしくはピアノが懐いている。すごいな、あんな御しがたいものを。ナウシカだなあれは。
一曲一曲とんでもない演奏後、一礼してステージ横に去っていくのだけど、その際に必ず左手で頭(髪?)をかきあげる。キューティクル。なんだろう、猫背。あと、弾き終わって立ち上がって礼するときに必ず左手だけがピグモンみたい体に添えられている。なんだろう気になる…あの左手首の上に、何か幸せの鳥的なものが停まっているのかな。…見えないけど。
あっという間の約1時間半だった。
そして拍手の後、やっぱり申し訳なさそうに猫背で出ていらして、アンコール1回目 (モーツァルト ピアノソナタ10番)。まあまあ長曲を弾くんだなあおまけがゴージャスだなあと思った。拍手。猫背で退場。拍手。
拍手…猫背で登場、アンコール2回目 (シューマン 献呈)。ああーいいきょくー。拍手。猫背で退場。拍手。
拍手…(あれ、客電がつかないぞ…)。猫背。鳴りやまない拍手に、「じゃあもう1曲だけ」みたいに下のほうでゆびを一本出して……アンコール3曲目(三曲も?!と無言の観客席から一瞬笑いが起きる)(ショパン エチュード第1番 エオリアンハープ)。拍手。猫背。拍手
拍手…(客電つかねえ…!)。……そして猫背(!)(ここでも観客席から一瞬笑いが起きたので、みんなきっと同じこと思った)。マイクもってる(!)一礼。で。
しゃべった。
「あのぅ……ほんじつはたいへん……(何だかもじもじする)…あしもとのおわるいなか…」
とまあ、長い時間を使って、上記のような「雨でしたね」という話をされました。
その他順番は忘れましたが、
〇 博多に泊まっていたが、朝は本降りではなかったのにな。
〇 昨日、敬愛する鉄人衣笠選手がインタビューに答えている映像を見てしまった。そうしたら「誰のために野球をするんだと思いますか?」とインタビュアーに逆質問をされていて、インタビュアーの女性が「観客のためですか?」って答えると、
「観客のため、もそうなんだけど、子供たちのため。子供の憧れの対象となる野球選手はその尊敬に足る人物であらねばならないと思っています」 で、シュウ、だったんですよ。…シュウ…終わるっていう字が出てきて。そこで終わるのすごいカッコイイ…ってなった。それで、自分は憧れられる対象とは、違うと思うけれども自分は子供たちのお手本になるような人間かなとか考えた。そうありたい。
〇 ショパンのバラードが今まででありえないくらい早くなってしまってそのままの速度で最後までいってしまった。何百回って弾いている曲なのにまさかこんな早くなるなんて最初はいつも通りだったのに、どこからか早くなってしまった…でもなんかよかったよね。
〇 愛煙家なんだけど何があったわけでもないけど、今日から禁煙する宣言。前に半年ほど禁煙してたときもあるけど、コンサート前に精神的にきついんです。というわけで今日始まる前に、これが最後の一本、と思って大事に吸っていたんだけども五分の一くらい吸ったところで水たまりにキレイに落としてしまって……美術さんにもらって1本吸った。
今回家に忘れてきちゃったんです。買いに行けばいいという話なんですけど、でもどこに行っても絶対年齢確認されるしパスポート出せって言われるし、いろいろめんどくさくなっちゃって。
というわけで、今日から禁煙します。もしどこかで吸ってるところを目撃したら、ああやっぱりダメだったんだなあと思ってください。
というような話をしていらした。
頭の良いひとなんだなあというのがわかるけど、しゃべりたいことが多すぎて、整理して話すとかいうことは苦手なんだろうなという感じでした。
とりあえず、宣言してることからも、禁煙を続ける自信がないことが透けて見えたなあとは思いました。
令和のナウシカは、ほわほわもじもじしていた。(←超失礼)
でも、こんなほわほわもじもじしている人が、あんなとんでもないピアノを弾く。
その裏側のとんでもない練習量と努力を思う。そして、そうであってさえも途方もない重圧を感じている彼を思う。
そんなこと微塵も見えない、いや、微塵も見せないほわほわもじもじだった。
また聴きたい。