のらりくらり日記

世の中のいろんなことにひっかかりつつ流される備忘録。好きなものを好きといってるだけ。過去の観劇日記もこちらに置いてます。某病理の元研究員なので科学系の話も少しだけ。

予防や医療とは関係のない、ウイルスの話をしようと思う(だいぶ雑) 4

4. PCR検査ってなに?

 というわけで4回目です。PCR検査。ご存じのようにウイルスに感染しているかどうかを調べる検査です。ではどんな仕組みなのか。


(1)とても小さなものを「見る」ためにはどうしたらよいか

感染している(陽性)かどうかは、このPCR検査結果を「見て」わかります。しかしウイルスはとてもとても小さい。では小さなものを見るためにはどうしたらよいか。
 答えは「たくさん集合させること」です。
 航空写真やドローン撮影などで、上空から大勢の人が作った人文字を撮影したりします。上空からだと人間は小さすぎて見えないのですが、たくさんがぎゅっとなってたら見える。
 同じようにウイルスもたくさんあれば見えます。というわけでまず「検査でわかるくらいに増やす」のですが、ウイルスを増やすのはすごく危険だし手順としてもすごく大変なので、ウイルスの中身、つまり情報物質だけ増やす、ということを最初に行います。この情報物質(正確に言うとDNA)を増やす方法を「PCR法」といいます。ちなみに高校で生物を選択すると理論は勉強しますし、キット(サーマルサイクラーとか泳動装置とか)は必要ですが、ものすごく高度なテクニックが必要なわけでない、比較的単純な方法です(この方法を閃いたマリスはこの功績でノーベル賞を受賞)

 ちなみに誤解してほしくないけれども、比較的単純だけど難しくないわけではないし、感染リスクを限りなく抑えながら検査するのには間違いなく腕がいる。

 だから検査は検査技師がやっているんです。国家資格は伊達じゃない。

 

(2)もう少し具体的に「増やす」方法
 今回のコロナウイルスやインフルエンザウイルスは主に気道を感染のターゲットにしています(ひどくなると肺まで広がる)。ということは感染者の気道やその周辺にはウイルスが多く存在するはずです(飛沫にも入っているしね)。ウイルスが多そうなところ、つまり咽頭などを大きな綿棒などでかきとると細胞(や粘膜)は採取できますので、それをまずゲットして、その中に含まれているウイルスの中身、つまり情報物質を増やします。
 しかしこのPCR法、同じ情報物質でもこれ(DNA)

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は増やせるけどこれ(RNA

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は増やせない。理由は壊れやすいから。
ですので、RNAを増やしたい場合は「増やす」前に準備として、RNAを壊れにくいDNAに変換する、という手順が必要です。逆転写酵素、という薬品を使うとそれが可能です。

(3)RNAをDNAに変換させて増やすイメージ図

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 これ、普通RNAからDNAになんて写らないんですよ皆さん!逆転写酵素すごい!その技術に拍手!

 そしてここまでがPCR検査の前半。

 

(5)後半は「目当てのウイルス」のDNAかを判断する

 前半で増やしたDNAですが、最初に採取した検体の中に入っている情報物質はウイルスのものだけではありません。

 私たちの細胞の中にもたくさんの種類の情報物質がありますし、もしかしたらそのときにたまたま吸い込んだカビの情報物質や検査前に食べたものの情報物質がくっついていることも考えられます。それらの情報物質(DNA)もまた、前半の作業で増幅されていると考えられます。
 そんなたくさんの「情報物質(DNA)」から「ウイルスの情報物質があるかどうか」を探すのが電気泳動という方法です。
「紫外線をあてると光る染色液」が入ってる(後で入れることもある)、やわやわのゼリーのプールの中を、前半で増やしたDNAに泳いでもらうのです。学校とかのプールを思い浮かべてください。DNAはマイナスに帯電しているため、プールに電気を流すと+方向に引っ張られて移動を始めます。大きさで速度が違います。小さい子が速い。大きい子は遅い。以下「イメージ図」

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 これが学校のプールならゴールまで泳がないとダメだったりしますが、この電気泳動では「限られた時間内でどの程度の距離を移動したか」が重要になります。

 というわけで、一定時間が過ぎると通電ストップ。そして観察になります。紫外線を当てると光る「イメージ図」

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 …すみませんケシゴムかけてたらちょっと紙がよれました。でももう書き直さない。

 あと、本当はもっと1つ1つが集団なんですがもう書き直以下同文。

 ええと、小さいものが長距離移動していて、大きなものが短距離移動。

 要するに電気泳動によって、情報物質をその大きさで仕分けできました。しかも見える。

(6)見えた「DNA」とウイルスのDNAとを比較する。

 ターゲットになっているウイルス(今だと新型コロナウイルス)がどのくらいの大きさかがわかっています。ということはこの「電気泳動」で泳ぐ距離もわかっています。で、
 泳ぐ距離が同じ=同じ大きさの情報物質=同じウイルス

 なのです。

 

つまりPCR検査とは、

・情報物質がRNAならばそれをDNAに変換する

・そのDNAを増やす

・大きさで分ける

という3つの作業で成り立っています(ウイルスによっては一番上の工程がない)。

 ではその正確さ(精密度)はどうかというとまあ当然ですが100%ではありません。そこそこです。70%程度と言われています。

 当然なのでもう一度言いますが、世の中には絶対なんてないのです。

 最初にとってきたサンプル内にどのくらい遺伝情報が入っていたかわからないし。技術とかちょっとした条件とか、まあいろいろと検査結果をグレーにする条件がたくさんある。こういうグレーゾーンの検査結果を「偽陽性」って言ったりします。

 でも抗体検査だってもちろん絶対じゃない。すりぬける人がいる、ということを忘れずに。三密ダメ。ゼッタイ。

 

 それから、わかっていることがある。
 前述したけど、感染リスクを重々承知で医療従事者の人たちがこの検査を今もなさっています。しかもキャパシティーを超える検査量をこなしていらっしゃる。それは仕事だから、では割り切れないような、本当に頭の下がること。

 検査をしていらっしゃる方々は、感染していない私たちのためにもまた活動していらっしゃることを私たちは忘れてはダメです。ありがたいことなのです。

 

 というわけで、次回は「抗体検査ってなに?」でお会いしましょうー。