のらりくらり日記

世の中のいろんなことにひっかかりつつ流される備忘録。好きなものを好きといってるだけ。過去の観劇日記もこちらに置いてます。科学系の話も少しだけ。

2014年12月、大阪で恋に落ちてる(何度目)。 舞台「ブエノスアイレス午前零時」観劇

 仕事納めの日に一日だけあった代休をぶつけて、新幹線で行ってきました。
新幹線と在来線の乗換えの際、きっぷを取り忘れたり、時間を間違えて一時間早く到着したりしました(おかげで晩御飯が食べられたんですが)。アホです。今年の私の時間間隔は完全におかしくなっています(秋の飛行機乗り遅れ事件を引きずっています)。

 さてそんな舞台観劇。「ブエノスアイレス午前零時」。
 原作が好きな感じだったし、
森田さんは絶対この舞台タンゴ踊る…しかも超シブいやつ…!!(←タイトルにもなってる原曲を聞いて知ってた)イヤーそれだけでも見る価値あるわよう。

 と思ってわくわくで行きました。
 そしてすっかりめろめろになりました。これ、できればもう一度観たいと思った。

 やばかった…。もりたごうが抜群にかっこよかった…!
 ゆきさだくんありがとう…握手を求めてもいいかな…同志よ!(いや違うから)
 この後はネタバレになります。
 そしてゴメン、これ、長いです…。 
 
 

 以下ネタバレあらすじ。
 

 東京で失敗して地元(新潟)のホテル(ダンスフロアがあるのが売り)の従業員として働く主人公カザマと、ダンス愛好会の一人としてヘルパー(原作では妹)と共にやってくる客の老嬢ミツコ(盲目・ブエノスアイレスで娼婦をしていたという噂がある)の話。
 ミツコは記憶が混濁する時があり、かつての恋人ニコラスと主人公カザマを混同する。しかしまたカザマも過去を「今」のこととして話す彼女と彼女の記憶に引きずり込まれていく。
 原作ではいろんなことがぼんやりとまたたいては消える感じだったのが、舞台ではかなりはっきり輪郭が浮き出た感じがしました。カザマの幻想か、ミツコの現実か、サイドストーリーがかなりくっついたせいだと思います。
 それがくっついたことがいいことか悪いことか私にはわかりませんが、舞台として、いろんな人にわかりやすくなったと思います。
 
 正直な話、カザマもニコラスも魅力的な人物ではない。カザマはクヨクヨして立ち止まってるし、ニコラスも短慮で未来がなさそうな感じがする。二人の共通点は挫折を知ってて気が弱いところと夢を諦めきれないでいることと、優しいところか。
 ただ、そんな彼らにどうしようもなく惹かれるミツコの気持ちはよくわかる。

 文字にすると魅力的なところの少ない彼が、ただひたすらかっこよかった。
 それはおそらく、男たちの中で彼だけが彼女たちときちんと向き合うからだ。
 あとは申し訳ないが脚本でも監督でもなく森田剛の魅力だ。(しむらさんの目はマジです)
 
 立ってても座ってても後ろ向いてても、まあ見事なまでの孤独感(というかぼっち感)。あれが通常仕様なんだったら、そりゃ三宅健だってぎゅうぎゅうするわいー!
 加えて、抑え気味の声が色っぽくて、そりゃあんな声で「きれいだ」とか言われたらときめくわいー!
 
 と思いました。そりゃ女子も舞台関係者もほっとかないよ!

 ダンスの合間をすり抜けながらの決闘シーンが非常に印象的でした。
 また、終盤のタンゴも圧巻。四人(若かりし頃のミツコ、老嬢ミツコ、ニコラス、カザマ)が重なり合うシーンでの、三人でのタンゴ、いやむしろ、その直前のカザマ(ニコラス)一人でのタンゴが秀逸。美しかった。

 あと、雪や照明がとても効果的に使われていて、派手ではなかったものの美しい印象が残るところがたくさんあってドキドキしました。

 
 誰もが底辺でもがいていて、渦巻く何かに飲まれまいとあがく中での奇跡のような邂逅。
それがこの三人(ニコラス、カザマ、ミツコ)だったと、そう思う。
 
 一瞬のためなら一生生きられる

 というのが昔CMか何かのコピーであったなあと思い出しました。
 もう…もう言葉にならん…!抜群に魅力的な森田剛を見せてもらった。ゆきさだくん握手だ!この同志め!(ちがう)

 さて他の出演者についても。

 原田美枝子さん。前の舞台では気付かなかったのですが、意外や小柄な人なのだということを知りました。ただ存在感は大きい。
 カザマにニコラスを求めるとき「愛している」感じがしないなと前半ずっと思っていたのですが、あれは「憐れんでいる」…というか「慈愛」という感じだったのだと終盤になって思いました。だからカザマは彼女を「盲目」で「記憶が混濁」している人だと思えなかったのだと。
 うーん深い。タンゴは静かな動きだったにも関わらずセクシーだったー。


 瀧本美織さん。いやあ初舞台とは思えない。女優さんだなあと思った。緊張してもっと必死な感じかと思っていたのですが、いやもう全然。ダンスも多分誰よりも練習したんだろうなあと思う。美しかった。
 原作にはあまり描写のない、過去のミツコ(マリア)なのですが、瀧本さんのミツコ(マリア)は元気で意志の強い、魅力的な恋する女性でした。ニコラスのことが大好きだ!もう爆発だ!(笑)みたいなものが見えるようでした。
 ただ、どっちも悪くない、むしろ魅力的なんだけど、今のミツコと過去のミツコが重ならない…という…。そこだけがこの舞台の違和感。でもいいのか、ブエノスアイレス時代は半分はカザマのイメージだからな…。

 松本まりかさん。声が独特ではっきり聞こえるので群衆でいてもどこにいるかわかるという。舞台人としてそれってすごいことだと思う。
 ブエノスアイレスでも日本でも、最後までミツコを見ていく人という、その覚悟と愛情がちゃんと見えてよかったです。彼女たちがいないとミツコには現実での救いがなかったと思う(精神的な救いはニコラスによって与えられていたとしても)。

 ここまでいろいろ書きましたが結論。
 いやもうただひたすら森田剛がかっこよかったー!久々にきゅんきゅんしたー!

 

 観れてよかった。観に来てよかった。

 ちょっと、忘れられない。